現物貸借申し合わせ

○ 国立大学図書館協議会 平成元年6月採択

この申合せは,国立大学図書館協議会を構成する図書館間の現物貸借を円滑化するため平成元年6月29日付で採択されたものである。

序 文
 相互貸借サービスは,利用者にとって利用可能な資料の範囲を大幅に拡大する手段として,館種や規模の大小を問わず図書館の機能を十全に発揮するうえで欠くことのできないものである。また,本協議会加盟大学の研究者・学生の利益にもかなうものであり,促進されるべきである。この申合せは,相互賃借サービスのうち現物貸借について,これを採用する各大学の自主的な判断を尊重しつつその現物貸借方針の適用をできるだけ寛大かつ容易にさせることを意図している。ただし,現物貸借業務は,個々の図書館における蔵書の整備充実を補完するものであって,取って代わるものではないことはいうまでもない。
I.定義
 現物貸借とは,依頼に応じてある図書館がその責任において他大学図書館から図書館資料そのものを借用する業務をいう。
II.目的
 この申合せに定義されている現物貸借の目的は,調査や高度な研究のために,それぞれの図書館では提供できない図書館資料そのものを入手することである。
III.範囲
 資料の種類を問わず,別の図書館に対する資料の貸出の要求は,先方の図書館が公表している現物貸借に関する方針(レンディング.ポリシー:マニュアル・別紙4を参照)に従って行うこと。特定の資料の提供の可否については,個々のケースごとに受付館が決定すること。
IV.依頼館の責務
いずれの図書館も,自館蔵書への他館からの現物貸借の依頼に応ずること。
いずれの図書館も,本来の自館利用対象者の持つ研究上の,教育上の,情報を得るうえでの,そして通常の調査上のニーズに応じ得る資料を整備しておくこと。この申合せにもとづいて他館に要求する資料は,原則的には,その図書館の蔵書整備充実方針に合致しない資料か,同一の要求が以後も繰返し生ずることのない資料に限定すること。
依頼館は,現物貸借に訴えるまえに学内の所蔵を調査しかつ利用するよう全力を尽くすこと。
各館の現物貸借担当者は,現物貸借関係の文書及び補助ツール類に精通しかつ利用すること。このなかには,この申合せ,マニュアル,主要図書館のレンディング・ポリシー及び標準的な書誌と書誌サービスが入る。
各館は,自館の利用者に現物貸借の目的やその図書館における他館からの借用方針(ボロイング・ポリシー)の内容を周知させておくこと。依頼館のどの階層の利用者も現物貸借の利用資格者とすること。
依頼館は,要求にあたってできるだけ複写で済ませること。
要求する資料については,一般に認められた書誌事項記入法に従って,完全かつ正確に記述すること。その資料が確認できない場合には,引用の情報源に関する完全な情報とともに,“未確認”という表示をしておくこと。
依頼館は,現物貸借の依頼内容すべてにわたって注意深く点検し,この申合せに適合しない依頼は謝絶すること。
資料の所蔵先を確定するために,総合目録,電算化されたデータベースやその他のリスト類のような標準的な書誌ツールを使用すること。特定の図書館に要求の負担が集中することのないよう注意すること。
要求にはすべて,その伝達方法を問わず原則として現物貸借用の標準フォーマットを使用すること。
借用資料の安全については,受付館からその資料が離れたときから受付館がそれを受けとるまで,依頼館側が責任を持つこと。依頼館は,良好な状態での資料返却を保証するように,資料の梱包に責任を持つこと。破損や紛失が生じた場合には,依頼館は受付館の申し出どおり,修理や弁償にかかる全経費を負担すること。
依頼館と利用者は,受付館の設定する貸出条件に従う必要があること。受付館がとくに禁止していなければ,依頼館での複写は許される。ただし,著作権法上適法であること,ならびに原資料にいかなる損傷も加えられることのないことが条件となる。その他,利用に当っては依頼館の利用上の規則によること。
利用が広範囲の蔵書に及ぶ場合や資料自体が特別な取扱いを要するものの場合には,依頼館は,利用者にその図書館を訪問させ,資料に直接接するようすすめること。この場合,依頼館は,利用者に対し必要な手続きをする手助けをすること(委任状等の持参:マニュアル・別紙3を参照)。
V.受付館の責務
現物費出に応ずる資料の範囲等貸出についての決定は,受付館の裁量に委ねられる。とはいうものの,各図書館とも,本来の自館利用者の利害に十分配慮しつつも,レンディング・ポリシーをできるだけ寛大に解釈することが望ましい。少くとも図書館(室)等の共同利用の場に配置されている資料については対象とすべきである。
現物貸借の方針及び経費についての説明資料を,依頼に応じ入手できるようにしておくこと。
受付館は,要求を迅速に処理すること。貸出条件は明示し,資料はていねいに梱包すること。要求に応ずることができない場合には,受付館はその明確な理由を記載したうえで依頼館に通知すること。
この申合せの規定を明らかに履行できない点があれば,受付館はサービス対象館に周知させる責任を有すること。
VI.費用
依頼館は,受付館より課金される費用すべてに対し責任を持つこと。費用は,送料等から成る。依頼館は,貸出を要求する当初の時点でこれらの経費を予期し承知しておくように心がけること。
料金が少額とはいえず依頼館側がそれを予測していないと思われる場合には,受付館は依頼館に通知して了承を求め,手続きをすすめること。
VII.貸出期間
貸出期間は20日間とし,延長を認める場合には10日間とすること。ただし資料の種類によってはこれより短期間であってもよい。貸出期間とは,とくに受付館からの指示のないかぎり,資料が受付館から発送されてから返却されるまでの期間をいう。
借用した資料は,利用がすみしだいすみやかに返却すること。
依頼館が貸出期間の延長を申し出るのは,例外的な事情がある場合にかぎること。延長の申込みは,貸出期限内に受付館に到着するよう連絡すること。受付館より回答がない場合には,l0日間延長が認められたものとみなす。
貸出中の資料は,返却のくりあげ要請には従うことが条件であり,その場合には依頼館はただちに応ずること。
VIII.申合せ違反
 各図書館ともに,この申合せの規定を誠実に実行する責任を持つこと。
この申合せのいかなる規定をも無視しつづける場合には,借用の権利を停止するに十分な理由となる。
IX.その他
この申合せの改廃は,総会で決定する。
この申合せは,平成元年6月29日から適用する。

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最終更新日
2008-03-17