記述対象は次の2種類に分けられる。
個々の資料の単位,すなわち,破損しない限り一まとまりのものを物理単位と呼ぶ。この意味では,ある図書館の資料と別の図書館の資料,それぞれの資料の複本等は,全て別の物理単位である。各参加組織のシステム,特に閲覧,貸出等のサブシステムにおいては,物理単位の管理が問題となる。
しかし,総合目録データベースという共有情報のレベルでは,物理単位の情報をも保持した上で管理することは,効率的ではない。
そこで,物理単位の集まりを「複本」としてグループ化し,出版物理単位にまとめる。これにより,ある図書館の資料と別の図書館の資料,また,それぞれの複本同士は同一の出版物理単位として捉えることが可能になる。一方,ある資料の上巻と下巻は,別の出版物理単位として捉えられる。
書誌単位は,同一の固有のタイトル等によってまとめられる出版物理単位の集合である。物理的に1冊の単行資料の場合,書誌単位は出版物理単位と一致する。同一の固有のタイトルを有する上巻,下巻の出版物理単位の集合は,書誌単位である。
なお,著作のタイトルは,一般的には書誌単位の固有のタイトルとは別のものであり,区別する必要がある。一つの書誌単位には複数の著作が含まれることがあるし,一つの著作が複数の書誌単位に分かれることがある。
単行書誌単位と集合書誌単位によって形成される階層関係を書誌構造という。
階層関係は,多段階となることがある。この場合,階層の上下関係の観点から,上位の書誌単位を親書誌単位(集合書誌単位),下位の書誌単位を子書誌単位(単行書誌単位又は集合書誌単位)と呼ぶ。
また,最上位と最下位の中間に位置する書誌単位を,中位の書誌単位と呼ぶ。
解説(書誌階層と書誌構造)書誌単位の階層関係は,1階2階というような絶対的なものでなく,ある書誌単位は他の書誌単位にとって上位の単位であるが別の書誌単位にとっては下位の単位となりうる,という意味で相対的である。この点を強調するため,本基準では,書誌構造という表現を用いている。
解説(書誌構造とレコードの作成単位)書誌構造の認識は,各図書館等が単独で目録作成を行う限りそれほど重要なものではない。しかし,書誌情報を共有する総合目録の世界では,共通の認識を保つことなくしては,レコードの作成のみならず,検索利用もおぼつかない。
そこで,総合目録データベースでは,書誌単位の認識をレコードの作成単位に反映させ,それぞれのレコードの関係をリンクで表現することによって,書誌構造を明確化している。
この方法によって,各図書館等の個々の目録体系,又は参照ファイル中のレコードがどのように作成されていても,それぞれのレコードの総合目録データベースにおける位置づけが可能となる。
図書書誌レコードの作成単位は,以下の基準による。
物理的に2冊以上の資料,シリーズ,セットもの等において,何を書誌単位とし,何を書誌単位としないかの基準は,次に示すとおりである。
書誌単位は,固有のタイトル,著者等によって書誌的に他と区別できる単位とする。
2冊以上の資料の各冊が上・下や第1巻・第2巻等の表示だけで区別されているとき,各冊は,固有のタイトルを持っていない。このことは,上・下の出版時期が同時でも異なっていても変わることはない。上と下が時期を異にして出版された場合,上のみが刊行された時点では出版物理単位が一つの書誌単位であり,下が刊行された時点で,同じ書誌単位が出版物理単位二つのものに変化するだけである。(例1)
(例1)したがって,上と下を異なる書誌単位とする次の(例2)は誤りである。
(例2)
現行の参照ファイル(JPMARC等)は,(例2)のようになっている。しかし,本基準では,(例1)のように巻次等はVOLに入れ,一つのレコードにまとめるという方法をとる。
また,参照ファイル(USMARC等)においては,各冊が固有のタイトルを持つ場合でも,上位の書誌単位で一つのレコードにまとめられていることがある。(例3)
(例3)
この場合は,固有のタイトルを持つものを一つの書誌単位として,別々のレコードを作成しなければならない。(例4)
(例4)
(例1)のように上・下であっても,(例5)の各巻は固有のタイトルを持っている。
(例5)
固有のタイトルは,目録規則に規定されたタイトルの情報源からとる。したがって,標題紙等には一つのタイトルと上しか表示されていない場合は,たとえ目次に上巻のタイトルに該当する情報が表示されていても,それを上巻の固有のタイトルとしてはならない。
また,固有のタイトルでない上や下が集まっても固有のタイトルにはならない。(例6)のVOLに記録されたデータは固有のタイトルではない。
(例6)解説(書誌構造の番号等と出版物理単位の呼称)
出版物理単位が複数集まって書誌単位となる場合,各出版物理単位は一般に,上,下や1,2等の名称で識別される。固有のタイトルとならないこれらの名称は,単行書誌単位からみた出版物理単位の呼称と考えることができる。例えば,「明暗 上」では,「上」の部分が出版物理単位の呼称である。
親書誌単位からみた場合,子書誌単位は一般に番号等で区別される。親書誌単位の固有のタイトルと子書誌単位の固有のタイトルの間にある,固有のタイトルでないものがこれである。例えば,「トルストイ全集 11 復活」では,親書誌単位のタイトルが「トルストイ全集」,子書誌単位のタイトルが「復活」,その間をつなぐ番号が「11」である。「トルストイ全集 4 戦争と平和 上」「トルストイ全集 5 戦争と平和 中」「トルストイ全集 6 戦争と平和 下」では,子書誌単位のタイトルが「戦争と平和」,出版物理単位の呼称が「上」「中」「下」,親書誌単位との関係を示す番号が「4」「5」「6」である。
このように,固有のタイトルとならない名称は,下位レベルの書誌単位がある場合(書誌構造のある場合)は親子間の関係を示す番号等となり,単行書誌単位の下では出版物理単位の呼称となる。
解説(固有のタイトルでないもの)何が固有のタイトルであるかを示すことは,容易ではない。そこで,ここでは,その名称をもって書誌単位とすることができないもの,すなわち「固有のタイトルでないもの」の範囲を示すことにする。
固有のタイトルでないものとは,書誌単位を出版物理単位(又は下位レベルの書誌単位)に分割するために与えられた名称である。
分割のために与えられた名称には,順序付けのためのものと,それ以外のものとがある。
本基準では,前者を「巻次等」,後者を「部編名」と呼ぶ。
「巻次等」の種別は,(第1表)に示すとおりである。
種別 | 具体例 | |
A | 数字 | 1⇔2⇔3...(1)⇔(2)⇔(3)... 一⇔二⇔三... i⇔ii⇔iii... |
B | かな | あ⇔い⇔う... い⇔ろ⇔は... ア⇔イ⇔ウ... ア~カサ⇔カシ~コメ... |
C | アルファベット | A⇔B⇔C... (a)⇔(b)⇔(c)... А⇔Б⇔В... α⇔β⇔γ... A~Ca⇔Cb~D... |
D | その他の順序付けのための名称 | 甲⇔乙⇔丙⇔丁... 正⇔続⇔完結 別(巻, 冊) 上⇔中⇔下 大⇔中⇔小 天⇔地⇔人 乾⇔坤 前⇔後 |
該当する名称の前後に次のような修飾語句が付いたものは,「巻次等」である。
第,巻,その,内,No.,編,篇,集,輯,冊,分冊,部,号,回,話,次,期,報,信,Lieferung(Lfg.),Part(Pt.),Volume(Vol.,V.),Band(Bd.),Teil(T.),Theil(T.),tome(t.),том(т.),часть(ч.),выпуск(вып.)...
(例)第1巻⇔第2巻⇔第3巻...
Bd.1⇔Bd.2⇔Bd.3
また,該当する名称の単純な組み合わせは,「巻次等」である。
(例)A-1⇔A-2... ...第5分冊の3⇔第5分冊の4...
IV-1⇔IV-2... Ser.1,no.8⇔Ser.1,no.9...
当初の予定では単行資料であったものが,その後,続編等を出版したために結果として順序付けが行われるようになった場合,順序付けがなされていない出版物理単位については本来「巻次等」は存在しない。この場合,当該出版物理単位には適切な名称を補記し,全体としての順序付けの体系を維持する。
(例)[正]⇔続⇔続々...
順序付けのための名称は,途中で用語法が変わることがある。この場合,全体を通しての順序付けが維持されていれば,用語法の相違にはこだわらない。
(例)上⇔下⇔続⇔続々⇔続々々⇔大尾 1A⇔1B⇔1C⇔1-4⇔1-5...
「別巻」,「別冊」等は,順序付けの体系の末尾に位置すべき名称として扱う。
(例)第1巻⇔第2巻⇔第3巻⇔別巻 上⇔下⇔別冊
「部編名」の種別は,(第2表)に示すとおりである。
種別 | 具体例 | |
E | 地域区分 1 地域名等 2 国名・州名等 3 都道府県名・ 市区町村名等 4 家名・藩名等 |
アジア⇔アフリカ... 太平洋⇔大西洋... 華北⇔華南 北アメリカ⇔中央アメリカ⇔南アメリカ 道北⇔道東⇔道南 Portugal et Espagne⇔Nederland et Danemark アイスランド⇔アイルランド... テキサス⇔フロリダ... Iceland⇔Ireland⇔England... 北海道⇔青森県⇔秋田県... 徳島⇔香川⇔愛媛⇔高知 横浜市⇔川崎市⇔小田原市⇔相模原市... 伊達家⇔上杉家... 会津藩⇔薩摩藩... |
F | 年代的区分 1 時代名 2 年月日及び その範囲 3 季節 |
奈良・平安時代⇔室町・鎌倉時代... 明治⇔大正⇔昭和 戦前⇔戦中⇔戦後 石器時代⇔青銅器時代⇔鉄器時代... Stone Age ⇔ Bronze Age... Ancient Ages ⇔ Middle Ages... 1985年度⇔1986年度... 1961-1970⇔1971-1975... 昭和20年現在⇔昭和30年現在 1980年夏季⇔1980年秋季... To 1334⇔1334-1615... 春⇔夏⇔秋⇔冬 夏期⇔冬期 春~夏⇔秋~冬 Spring⇔Summer... |
G | その他の区分 1 学校, 教科, 学年等 2 法律等のセクション番号 |
ようちえん⇔小学校... 国語⇔算数⇔理科⇔社会... 低学年⇔高学年 中1⇔中2⇔中3⇔高1... §1~20⇔§21~40... 第1~第10節⇔第11~第30節... First course⇔...⇔Fifth course⇔Complete course |
H | 対になって用いられる一般的な名称 | 総論⇔各論 海外⇔国内 外国⇔内国 欧文⇔和文 洋画⇔日本画 和⇔漢⇔洋 口語⇔文語 人文⇔社会⇔自然 基礎⇔応用 総記⇔哲学⇔歴史⇔社会科学⇔自然科学... General⇔Particular International⇔Domestic Spoken language, Colloquial language⇔Literary language Human science⇔Social science⇔Natural science General⇔Philosophy⇔History⇔Social sciences⇔Natural sciences Pure mathematics⇔Applied mathematics Theoretical physics⇔Applied physics |
I | 形式区分を表す名称 | 詩歌⇔戯曲⇔小説⇔評論⇔日記... Poetry⇔Drama⇔Fiction... Tragedy⇔Comedy... |
J | 付録であることを示す名称 | 付録 追補 補遺 追録 付図 図版 図表 年表 解説 資料 索引 Supplement, annexe, Appendix, Index, Erganzungsheft |
K | 付録ではないことを強調する名称 | 本文 本体 Text, texte |
該当する名称の前後に次のような修飾語句が付いたものは,「部編名」である。
編,篇,巻,(の)部...
(例)邦楽の部⇔洋楽の部 巻・春~夏⇔巻・秋~冬
また,該当する名称の単純な組み合わせは,「部編名」である。
(例)品川区・大田区⇔目黒区・世田谷区... 本文⇔解説・資料⇔索引
上記E~Kに該当しなくても,「編」「篇」「巻」「(の)部」等の語句を有し,明らかに,部編名として機能している名称は,「部編名」として扱う。
(例)データベース編⇔検索編⇔登録編解説(固有のタイトルでないものと書誌単位)
固有のタイトルでないものと書誌単位の関係は,以下に示すとおりである。
名称が「巻次等」と「部編名」のいずれであるか不明の場合は,当該名称を「部編名」として扱う。
なお,名称が「巻次等」であるか否か,「部編名」であるか否かが不明の場合,すなわち,名称が固有のタイトルでないものであるか否かが不明の場合は,当該名称を固有のタイトルであるとみなす。